刻音色(ときねいろ) -一の刻(いちのとき)-
――「僕」は目覚めた。
雪に閉ざされた山間の旧い館で。頭に怪我を負い運ばれたという。
書物と絵画に囲まれ、椿を愛でる妙齢の女館主も、悲しげに微笑む四人のメイドも皆、全てを知っているようだ。「僕」には分からない。思い出すことができない、何もかも。
「あなたは刻(とき)のないこの館に、時間を持ち込んでしまった」
蝋燭の灯りで語られる神隠し伝承に導かれるように、歯車は回り始めた。深夜零時。数十年、動くことのなかった大時計が、十三点鐘を告げる。
...すべて読む>内なる井戸の底から這い出した黝(あおぐろ)い翳(かげ)が徘徊する時、闇に漏れ聞こえるメイド達のすすり泣きは、恍惚…それとも――。
刻音色(ときねいろ) -二の刻(にのとき)-
館内倉庫、ぐったり疲れ果てた梨花の傍らで、衣服をズタズタに引裂かれ犯○れ続けるカスミ。
翌朝、梨花が目をさますと、カスミともう一人の刹弥の姿はすでになかった…。それだけではなく梨花たち、全員の前夜の記憶は完全に失われていた。
そして再び正午を告げる鐘が鳴る。十一、十二…そして十三。
「兆候」が始まった。
メイドたちは再び欲情の渦に巻き込まれてゆく……。
苦痛と快楽の間で次第に明らかになってゆくもう一人の刹弥たちの過去、正体。
そしてカスミは……!?